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病院で食べるミカンの味気無さ [懐かしい物]

病院食に蜜柑が出たから食べたのだが何か違和感がある。なぜだろうか。実は蜜柑は独特のシチュエーションを想定した食べ物なのである。山陰の冬は暖かい日が照る事がない。雪解けのぬかるみでは外でも遊べず、冬ごもりといった感じで家族は炬燵の周りに集まる。そんなとき、必ず食べたのが蜜柑だ。蜜柑は一家団欒と切り離せないものだ。断じて病院のベッドの上で一人食べるものではない。

どこの家でも冬には蜜柑を箱買いして常備していたと思う。我が家では父の同僚の実家が有田だったので、毎年大きな箱に入った蜜柑をもらった。廊下の端の冷え込んだ所にある箱から蜜柑をもってくる。蜜柑は4っつに割り、底の方を右手の指で押さえて、左手で身をくるりと回すように取り外す。こうするとスジが皮の方に残ってとれてしまう。これが普通のミカンの剥き方だと思っていたが、どうもそうではないらしい。

「有田剥き」などと言われてYouTubeで話題になったりしている。有田周辺特有の剥き方なのだそうだ。病院のミカンもこの「有田剥き」をやって見たのだが、スジが少し残る。有田蜜柑に対して特に有効な剥き方なのかも知れない。だとしたら、これが全国に普及しない理由だ。

近年、家でも蜜柑を食べる機会が少なくなったように思う。いろんな果物が出回るようになったからだ。オレンジに比べると蜜柑の味は薄くて頼りない。人々はもっと濃厚なおいしさを求める。日本独特の味だが多分輸出は出来ていないだろう。アメリカのスーパーでも見る事はなかった。日本国内ですらジュースは圧倒的にオレンジが優勢で蜜柑ジュースは人気がない。

しかし、缶詰となると、やはり蜜柑だ。オレンジの缶詰なぞ聞いたこともない。小粒なのにきれいに皮がとってあり、シロップで甘みが増やされている。多分こちらなら病院でも違和感がないだろう。風邪で元気なく寝込んだ時に食べさせてもらった覚えがある。缶詰だから新鮮さといったものはない。もともと蜜柑は「とれたて」だとか「新鮮さ」といったことが強調されることのない果物なのだ。駅のホームでは必ず蜜柑を冷凍にして売ってあった。

他のおいしい果物に押されて、劣勢なのではあるが、それでもやはり、蜜柑は失いたくない味だ。蜜柑を食べるとあの家族が集まった時の笑い声を思い出す。それが何物にも替えがたい幸せというものだろう。昨今は部活や塾で子供たちも忙しい。長時間労働やシフト勤務が増えて親も忙しい。だからといって、一家団欒の機会を安易に失なってはならない。
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