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さいなら三角またきて四角 [若かった頃]

家の傍に小高い丘があった。丘よりも急峻なところがあったから山である。雑木が茂り、曲がりくねった山道がいくつもあった。ここが僕らの遊び場だ。腰に刀を差して連れ立って歩いた。もちろん、そんなおもちゃを買ってもらえるものでもなく、自分で木を削って刀の形にしあげたものだ。時折、「曲者!」と叫んで、手裏剣ならぬ木片を投げて見る。
「なあ、今黒い影が走っただろ」
必ず調子をあわせる奴がでてくる。「そこにも!」と叫んで手裏剣を投げる。
「うむ、仕損じたか」「素早い奴だ」
「あれは伊賀者だ」
「僕たち甲賀だもんね」
やがて道はちょっとした広場に出る。そこは一面ススキ野原になっていた。遊びは鬼ごっこに切り替わる。身の丈ほどものススキが生い茂っているから、身を隠すことが出来る。かがんで素早く動けば、鬼が来たころには、もうそこにはいない。神出鬼没の忍者を演ずることができるのだ。

遊んでいると時間が経つのが早い。やがて、ススキの原に夕日が射すようになる。空にはトンビが悠然と舞い、あんな風に飛べたらなあと、しばらく見上げていたりする。みんなの顔が赤く染まった頃、決まってカラスの鳴き声が聞こえる。もう家に帰らなくてはいけない。「カラスが鳴くからかーえろ」は本当だ。

また連れ立って山を下りる。名残惜しいが友達とも別れの挨拶をしなくてはならない。

さいなら三角また来て四角
四角は豆腐 豆腐は白い
白いはウサギ ウサギは跳ねる
跳ねるは蛙 蛙は青い
青いは柳 柳は揺れる
揺れるは幽霊 幽霊は消える
消えるは電気 電気は光る
光はオヤジの禿げ頭

結構長いのだが、この歌を友達の家の前に来るたびに繰り返す。家に帰った頃には日が暮れてあたりは薄暗くなっている。いつものように「いつまで遊んでいるの」と怒られそうだ。これは一種のざれ歌だが、誰に教わったと言うことはない。ただみんな歌っていた。連れ合いに尋ねたら九州天草島でもこの歌を歌っていたと言う。僕がいた若狭湾とはこんなにも離れているのに、どうやって伝わったのだろうか。実に不思議である。
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ピーちゃん

毎日を明るく精一杯お過ごしの様子尊敬しています。
体調心配しています。
頑張って下さい。
by ピーちゃん (2019-03-14 16:28) 

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