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夏空を見上げて口にかき氷 [懐かしい物]

気温が上がってきている。もうじき夏がやって来る。しかし、まだエアコンは点けていない。もう少し自然の空気の中に身を置いて人工的でない環境を味わいたいからだ。窓から入って来る風の心地よさを感じたい。

しかし、暑い。連れ合いが冷蔵庫から取り出した小豆アイスを渡してくれた。なんという贅沢だろうか。子供の頃アイスを食べるのはそう簡単なものではなかった。汗をかきかきアイスキャンデー屋に買いに行かなければならなかった。僕の町には一軒だけアイスキャンデー屋があった。

店先には、大きな箱状のアイスキャンデー機があり、その横でベルトドライブのコンプレッサーがガタガタ揺れていた。まだアンモニア冷凍機の時代だ。時々アイスキャンデー屋で爆発事故があった。アイスキャンデー作りは命がけの仕事だったのである。

八連くらいのブリキの容器に汁と棒を入れてしばらく箱の中に入れておくとアイスキャンデーができる。取り出してひっくり返すとアイスキャンデーがバラバラと落ちてくる。僕は店先に立ってその一部始終を飽きず繰り返し眺めていた。アイスキャンデーはめったに買ってもらえるものではなかったから「見るだけ」のことが多かったのである。

アイスキャンデーよりも一般的だったのは、かき氷だっただろう。「氷」の旗がぶら下がっている店で、氷の塊を回転させて削る。かき氷にありつこうと、テストの点数をアピールしたり、自発的にお手伝いをしたり、涙ぐましい努力をしたものだ。どの店にも冷凍庫はなかったから氷は専門店から調達していた。大きな氷を鋸で切って小売する店だ。一般家庭にも配達してくれて、世の中が少し豊かになった頃にはなるが、我が家に氷冷蔵庫が入った。何のことはない断熱箱の上部に氷を入れておくと庫内の温度が少しが冷えるというだけのものだ。

嬉しいのはこの冷蔵庫には常に氷の塊があり、これで「かき氷」を作れることだった。削りカスの溜がついたカンナのようなもので削る。お店のかき氷のようにふわふわしたものは出来ず、ザラメ雪のようなものだったが、いちごシロップを掛けると冷たさのなかに甘いかおりがして最高の楽ししみとなった。だからせっせとカンナ掛けをした。

最近は、かき氷のお店が見当たらない。カフェなどにあるのはクリームやチョコレートで飾ったおしゃれなもので、これは断じてかき氷ではない。あの夏の日のかき氷が無性に恋しくなったのだが、それは暑さをものともせず走り回っていた元気な自分への憧憬でもある。

調べてみると家庭用の電動かき氷機と言うのがある。うまく刃先を調整すれば、本物のふわふわしたかき氷が作れるらしい。思わず通販のボタンを押してしまった。どんなものが出来るのか、のちほど後記を書くつもりだ。
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ふかさん

おらさん
羨ましい限りです。九州出身ですが、当時は貧乏貧乏と言われ、買い食いをしたことはありません。勿論アイスキャンデーもかき氷も。住んでた処は田舎でもなくかき氷屋も近くに在りましたが、お金が無いのではなんともなりません。スイカを井戸水で冷やしていた覚えはありますが、冷蔵庫って無かった様な。昔のタイプの氷冷蔵庫も。そういう点で、おらさん家の暮らしが羨ましい。近所の同級生の家も同じ様なものでした。おやつなんかも無かったし。
by ふかさん (2018-05-17 16:24) 

おら

ふかさん
文面からは頻繁にアイスを買ってもらっていたかに見えるかもしれませんが、そう豊かではなかったので、めったにない事でした。だからこそアイスキャンデーが懐かしいのです。誰もが貧しい時代でしたが、貧しさをバネにして人生を切り拓いて行った英雄たちを輩出した時代でもあります。
by おら (2018-05-18 14:06) 

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