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なぜフォークソングだったのか [若かった頃]

最近はナツメロとしてフォークソングがとり上げられるようになったようだ。「神田川」とか「この広い野原いっぱい」など出てくるが、僕に言わせればこんなものはフォークでもなんでもない。岡林信康とか高田渡なども元祖として言われるようだが、確かにフォーク色は濃くなるがこれでもない。僕がまぎれもないフォークソングだと思うのは、Peat Seegerの「If I had a hammer」だろう。PPMが歌っていた。

いつの世にも歌はあった。橋幸雄「いたこ笠」とか坂本九「しあわせなら手をたたこう」高倉健「網走番外地」が流行っていた。多くの人々はこういった流行を取り入れ、歌を人生のよりどころとしていた。レコード会社は、大衆の気分を取り入れ、歌手に歌わせてていた。しかし、それはどこか遠くの世界での流行で、自分達の世界ではないと感じている集団がいた。それは学生たちだった。

今は誰でも大学に行く時代だから、学生は一般大衆の一部でしかない。しかし、当時の大学進学率は20%程度で、家業を継ぐか、近隣の工場に勤めるかが、一般的な生き方だった。勉強ができるとかできないとかの前に、生き方は決まっていたのだ。

もう少し前の世代なら、田舎から大学に行くなどと言うのは、例外中の例外で、学生は完全なエリートだった。この時代には、「学生さん」という言葉はまだ残っていたが、進学率が20%にもなると、もはや学生は特別な存在ではなくなってきた。エリートから一般大衆への過渡期に遭遇したのが団塊世代の学生達なのである。

エリートではないくせに、一般大衆としての自分が受け止められない。俺達の歌がない。そう感じていた部分が大きかった。レコード会社が提供してくれる歌は、どれもこれも自分たちの感性に合わなかったのだ。政治的にも、学生は孤立していた。

「なんで、アメリカが遠いベトナムにまで軍隊を送り込むのだーーおかしいじゃないか」「なんで中国大陸を無視して台湾を唯一の中国政府とするのだーーおかしいじゃないか」「なんで汚職ばかりを繰り返す自民党だけが議員になるのかーーおかしいじゃないか」。

一般の人たちはこういったことに無関心で、ひたすらオリンピックを楽しんでいるかに思えた。

こうした学生達の思いを受け止める歌が欲しかった。そんな時に現れたのが、フォークソングであり、僕にとっても、PPMとの出会いは感激的なものであった。今までとは質のちがうメロディーも美しかったし、マリーの歌声は澄み渡っていた。

If I had a hammer, I'd hammer in the morning
I'd hammer in the evening, All over this land

I'd hammer out danger, I'd hammer out a warning,
I'd hammer out love between my brothers and my sisters, All over this land.

「ハンマー持ったら」の意味は、「何でもぶち壊してしまえ」ではないし、大工道具でもない。アメリカ映画でよく出てくる裁判官の木槌だ。もしも僕がハンマーを手にしたら、朝から晩まで、判決出しまくるぞ。あいつら、政治家がやってることは、全部違法だ。こう歌い上げるのだ。興業師やレコード会社におもねったりせず、ギター一本で歌えると言う事が、のめりこみに拍車をかけた。

あちこちの大学でギターをかき鳴らす学生がでてきた。やがて岡林、小室、高田といった音楽的素養のある学生達が日本語で歌を作り出し、フォークソングが、日本で受け入れられやすい形で広まっていった。それは、なかなか素晴らしいものであり、音楽全体に大きな改革をもたらすものだった。しかし、同時に内面への志向を高め日本的な変形が始まった。結果的には、レコード業界にも取り込まれて、甘ったるい青春メロディーがフォークとしてもてはやされるようになっていったのである。

楽器はだれでもうまく弾けるものではない。あきらめて、放り出す奴もいた。僕も、友達にもらったギターを弾いてみんなで歌ったりしたが、もちろん、人に聴かすレベルのものではなかった。今、歌も久しく歌っていない。間質性肺炎で息が短いし、歌おうとしたら、咳込んでどうにもならなくなる。
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とこ爺

おらさんより私の方が少し年配のようです。大学進学が珍しい時代で、私も夜間大学に通い、苦学生の真似事をしました。学生時代、いろいろの歌をうたいましたが、フオークソングは卒業後の世代に歌われました。ところで、間質性肺炎、歌うことは身体によくないですかね。大声を出すのでなく、ゆっくりしたうたなら肺の活性化のためにも良いのではないかと思いますが・・・。おらさんの意見をお聞きしたいです。
by とこ爺 (2016-03-20 08:34) 

おら

間質性肺炎では肺が萎縮しますから、肺筋を鍛えて肺活量を増やす努力が大切だと言われています。深呼吸をしたり、歌ったりすることは大変いいことなのです。僕も歌おうとしているのですが、もともと音楽素養がないので、息切れでますます調子はずれになって、歌になりません。

とこ爺さんのアコでふみさんが歌われるのは、本当に素晴らしいと思います。学生時代も、卒業してからも、うたごえサークルなどで活躍してこられたのかなと想像しています。
by おら (2016-03-20 09:43) 

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