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酸素ボンベと同調器 [療養]

間質性肺炎になって以来、「在宅酸素療法」を続けている。「療法」と言っても、これで直るわけではない。肺胞が損傷を受けた結果、肺活量が小さくなってしまい、外部から酸素の補給が必要なのである。

僕の場合、運動すると苦しいが、安静にしておれば特に息苦しいというわけではない。それでも、脈拍は高い。つまり、血液を高速で回すことによって、体内に供給する肺からの酸素を増やそうとするのだ。結果的に心臓への負担が大きい。だから、酸素を吸って、心臓の負担を減らしてやろうということだ。酸素吸入量は今のところ1L/minでしかない。これが今から増えて行く可能性は十分ある。

家には酸素濃縮機が設置してあり、空気中の酸素を濃縮する。出来た酸素をチューブで鼻に持って行く。鼻の穴とのインターフェイスになる部分をカニューラという。僕の場合10mのシリコンチューブの先にカニューラをつけているから、家の中はどこにでも行ける。ただし、チューブを引きずるから、時々引っかかることがある。まあ、これは仕方ないが、鎖に繋がれた犬になった気分だ。

外に出かける時は、酸素ボンベのお世話になる。POCも使うが、これについては後日書くことにする。常に、5,6本持っていて、なくなれば酸素会社に連絡して持って来てもらう。持ち歩きには、少し重いので、多くの人はカートに積んで、転がしてているのだが、僕はあえてカートを使わず、担いで歩くようにしている。重さ4kgくらいだから、軽くはない。しかし、カートよりずっと機動性がある。

ボンベには圧縮した酸素がつめてある。150気圧だから見た目の150倍の酸素があるわけだ。しかし、ボンベの厚みもかなりになるので、1本の酸素ボンベに入っている酸素は大体360~400Lくらいで、もし1L/minで使えば360分つまり、3時間でなくなる。予備のボンベを持って歩くとなれば大変だ。うまく考えたもので、同調器というのがついている。酸素がいるのは、息を吸うときだけだ。しかも、吸う時の前半だけが有効で、後半は肺の奥までたどり着かずに吐き出されるから意味がない。だから、息を吸い始めるタイミングを捉えて、パッと酸素を送れば、1/4の量で効果を保てる。そうすると、ざっと4倍、12時間は持つことになるのだ。これだけあれば、出歩くといった分には問題がない。僕は、毎日ボンベを持って出勤して帰ってこられた。

ありがたい同調器ではあるが、これが使えないという話をよく耳にする。「私は同調器が合わないから」と言う人は多い。実は誰もが「同調器が合わない」と思うように出来ている。呼吸による微妙な圧力の変化を検知するのだが、遅れを防ぐために、吸うタイミングではなく、吐き終わったタイミングを捉えるものが多いからだ。使う側から見ると、何か外れたタイミングでバルブが開いているように感じられるが、機能的にはこれでいいのだ。使わないために外出を制限されている人はもったいないことをしていると思う。

実は同調器には問題が多い。医療機器だからということで、やたらと厳しく作られている。ユーザーから不満が伝えられても、命に関わるというわけで、なかなか改良が進まないらしい。同調器は電子機器だから電池がいる。バルブを動かすのだから結構この消耗が激しい。3日ごとに電池を入れるのは出費も大きい。ニッカド電池で充電して使いたくなるのだが、これがうまく行かない。ニッカド電池は普通のアルカリ電池よりも少し電圧が低い。すぐに、電池がなくなったという警告が出る。警告というのが用心深く、まだ数時間分も残っているのに、うるさく出てくるのだ。

これに対しては、サンヨー、パナソニックから出ている新しいタイプのニッケル水素電池を使うと良いことが分かった。普通の充電式電池より少し電圧が高いのだ。もちろん、酸素会社の人は、アルカリ電池以外は使わないでくださいと言う。電池代は随分助かるが、変則使用はあくまでも自己責任である。実際、ニッケル水素電池の場合、警告が出てから動かなくなるまでの時間が短い。酸素が無くなればたちまち苦しくなる人は止めておいたほうが良い。必ず予備電池を持って出かけなければならない。

同調器の警報音は、他にも問題を引き起こす。カニューラを使うと、どうしても鼻を刺激してしまい。鼻水が出る。鼻づまりになると、呼吸がうまく検出されなくなり、警報を発する。呼吸が止まったかも知れないので、医療機器としては当然の仕様ではあるが、このけたたましい警報が問題になることが多々ある。映画とかお芝居を観ていて、感動的なシーンになると、鼻がつまって警報が出るのだ。周りの人にとって、これほど迷惑なことはない。

警報を止めることは技術的には簡単なことだ。しかし、もし警報が鳴らなくて誰か死にでもしたら責任問題が生じる。だから、いつまで経っても警報停止スイッチはつかない。

ところが最近、画期的なものを発見した、小池メディカルが作っている「酸歩フリー」という同調器だ。完全機械式で電池を使わない。だから、警報の出ようがない。これで事は済むのだ。出るようにできるが、出さないのではないから、責任問題は発生しないというわけだ。さっそく、これに取り替えてもらった。電池の消耗はないし、トリガーのタイミングも、吸気にあわせて働くから自然に感じる。

機械は、いろいろと工夫されるものなのだ。 最近衰退が目立っているが、日本の製品技術も、まだまだ捨てたものではない。

関連記事: 携帯用酸素濃縮機(POC)を使う
関連ブログ: ブログ村間質性肺炎

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