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肺がん宣告、余命2年かあ (3) [療養]

レントゲンで小さな白い陰を見てから3ヶ月、CTと腫瘍マーカーで扁平上皮ガンと診断されて、治療方針を決めるための経過観察が続いている。粒子線治療に持って行きたい僕は、主治医の説得を試みようと、資料を用意して診察に臨んだ。

ところが、ガン診断から3ヶ月目になって、主治医の口から出てきたのは、驚くような言葉だった。消えた左胸の陰だけでなく、右胸の腫瘍もガンではないかも知れないと言うのだ。主治医が根拠とするところは「顔つき」である。ガンらしくない顔つきだとは当初から言っていた。僕の肺の状況は、間質性肺炎がすこしづつ進んでいて、左胸のようにCTで白い塊と見えるようなものがどこに現れたり、消えたりしてももおかしくない状態だそうだ。

しかし、腫瘍マーカーによる検査もはっきりとりと値が出ている。僕もブログなどを検索してみたがSCCの6.5というのは、生半可な値ではない。この先生は検査数値よりも「顔つき」を重視するのだ。ベテランで数多くの症例を見てきていることは確かだ。典型的なアナログ人間で、カルテもずっと手書きだった。病院が電子カルテを導入してしまったのだが、自分で入力できず、アシスタントが横について、先生が言うのを打ち込んでいるくらいだ。

インターネットであらゆる情報が手に入るようになり、たいていの論文も読めるから、検査数値に基づいた診断なら、勉強すれば素人にも出来る。こうした検査以外のところでの症例の蓄積による判断が医師にしか出来ない本当の医療なのだと思う。その点を高く評価して、近くに立派な病院が沢山あるのに、この主治医の転任先まで、わざわざ通っているのだ。

もうひとつ、主治医が指摘する重要な点は、3ヶ月経っても腫瘍が大きくなっていないということである。よく見ると心持ち小さくなっているような気さえする。増殖して行くからこそガンなのであって、大きくならないなら、ガンではない。少なくとも今急いで何らかの手を打つ必要はないから、このまま経過観察を続けるという意見だ。

「でも、腫瘍マーカーは相当立派な数値ですよ。 前回採血をして2度目の腫瘍マーカーテストもしていただいたのですが、結果は出ていますか?」

主治医もまだ見ていなかったらしい。コンピュータ画面に出してもらって驚いた。なんとSCCは、1.7に減ってしまっていた。基準値は1.5だから、陽性ではあるのだが、確実に高いとはいえない値だ。KL-6で言えば3000あったものが500になったようなものだ。あり得ない。あり得ることではない。

僕のように色んな病気を抱えている人は、普通にはいない。こういった特殊な人の場合、腫瘍マーカーは、その影響を受けてしまうことがある。だから僕の場合に限って、腫瘍マーカーの値はあてにならないということだった。こんなにも大きく変動することが、その証拠だというが、そのとおりと言うしかない。

それでは、ソラマメ君は一体何なのか?これについては主治医も首をかしげたままだ。ガンでない可能性があると言うだけで、ガンではないと診断されたわけではない。ガンは「悪性新生物」なのだが、その悪性度はまちまちだ。マーカーも陽性ではあるのだから、やはりガンではあるだろう。ただ、僕の場合、その悪性度が低く、成長が止まってしまった、あるいは、少しづつしか増殖しなくなったタイプのものである「がんもどき」の可能性がある。

長期にわたって共生できるガンなら、粒子線も抗がん剤もいらない。まだわからないが、ともかくも危機を脱したような気がする。家に帰ってしばらくしてから、開放感のようなものがこみ上げてきた。素直にうれしい。

肺がんになってしまったことは不幸だ。しかし、その中で、悪性度が極めて低いガンだったとしたら、これは不幸中の幸いである。またしても「僕の病歴」に不幸中の幸いが加わったことになる。

主治医に言われたことは、やはり、全体として間質性肺炎は少しずつ進んでいるということだ。「なんとなく過ごす日々」は、何時までも続かない。「余命2年」ではなくなったのだが、人生の終末がそんなに遠い未来のことではないことは、心得ておくつもりだ。

(「肺がん宣告、余命2年かあ」終わり) ----->(1)から読む 
-----------------<追記>-----------------------

ガン宣告から5か月後、ソラマメ君は大きくなる様子がない。SCC腫瘍マーカーのほうは、一旦1.7にさがって、そのあと2.0そして2.7と言う風に微妙に増えたあと、また1.7に下がった。ここにきて、これはガンではあり得ないという判断が下った。ガン宣告は撤回された。

「がんもどき」とか「ニセがん」と言われる部類のものなのだろう。経過観察の時間を取ったから「ニセがん」が判明したのだが、これがもし、経験のない医者だったら、CTと腫瘍マーカーで直ちに抗がん剤投与になっていたかもしれない。その場合、マーカーが下がったのも、腫瘍が大きくならないのも抗がん剤の効果だと判定されただろう。

世の中にはこういった「ニセがん」が結構多い。過剰診療によるガン判定がガンの治療効果を押し上げている。福井の小児科医である木川芳春さんが、これをがん統計からつきとめて、現在新しい本を執筆中だ。出版されたら波紋を呼ぶだろう。

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コメント 2

ゆりりん

おら様
良かったですね。
がんと言うと、すぐに治療を始めたがる通常の医師や患者と違い、非常に冷静に対応されている主治医の先生、素晴らしいと思います。またその主治医の先生と信頼関係を十分に結んでおられる、おらさん、お手本にしたいと思いました。
by ゆりりん (2016-06-03 06:33) 

おら

良かったというか、まだ診断が覆されたわけではなく、経過観察中で中途半端ではあります。それを含め、「なんとなく過ごす日々」が、続いてくれればそれでいいのかと。
by おら (2016-06-07 22:47) 

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