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不幸中の幸いばかり---僕の病歴 [療養]

僕は、生まれてすぐに1才でジフテリア禍事件に巻き込まれた。ジフテリアの予防注射に毒素が混じった事件だ。84人が亡くなったのだが、僕は死の淵をさ迷いながら、奇跡的に助かった一人だ。不幸中の幸いの始まりだった。

後遺症かもしれないが、体は丈夫でなかった。中学生の時には腎炎になり、入院でかなり長く入院して、通常ならば高校進学が危ぶまれるところなのだが、当時の京都府は蜷川知事の革新府政で「15の春は泣かせない」という教育政策で、難なく高校に進学できた。これも不幸中の幸いだろう。

高校でも、入院があり、順調ではなかったし、父親の転勤で転校もすることにもなった。しかし、幸いなことに、温かい高知に引っ越したことからか、3年生時分には、すこぶる体調が回復して、受験勉強をすることができた。体調の波が都合よかったのでこれも不幸中の幸いになる。

大学では、おおむね体調よく過ごせたが、睡眠異常に陥った。今思うに自律神経失調症だったのではないかと思う。昼夜逆転で、なかなか授業に出席できないことが続いた。4年生の授業は結局一回しか受けていない。これは不幸なのだが、幸いなことに、出席をとやかく言うような大学ではなかった。自分で勉強して、試験を受けさえすればそれで良かった。そもそも、大学闘争の最中で、授業もまともに行われないことが多かったのだ。卒業し、合格最低点だったと思うが、大学院にも進学できた。

大学院では午後から夜中に実験するのも普通だから、問題は無いのだが、会社に就職するとなれば、朝早く起きなければ生活は成り立たない。これは、かなりピンチではあったが、幸いなことに研究を続ける道に進むことができた。生活時間など、気持ちの問題で、誰だって早起きできるなどと言う人がいるが、それほどたやすいものではない。僕は世の昼夜逆転族に共感する。昼夜逆転から引きこもりとなって、社会から葬られてしまう人も多い。

研究する上では、出勤時間などは問題ではないし、要するに、論文を書いて成果を示せばよいのだ。体調を崩してもそれに合わせた仕事ができる。今でも朝は苦手ではあるが、10年ほどもかかって、一応社会生活ができる範囲にはなった。実際には、体調もよくなり、まるで丈夫な体の持ち主であるかに感じたくらいだから、一応の仕事は出来た。しかし、本来目指すべき画期的な業績には、程遠かったのだから、残念というべきだろう。病気のせいにするのは逃げ口上である。僕の才能の限界と認めざるを得ない。

しかし、健康というわけではなかった。ずっとリウマチに悩まされたし、心房頻脈で心臓手術も受けた。耳は難聴で、目は硝子体の濁りが取れない。肝機能が良くないので酒類は一切飲めない。およそ悪くない所は無いくらいだ。しかし、こんなものは、不幸の内に入らないと思っている。

不幸と言えば、経歴途中で、間質性肺炎になったことだ。急性増悪で病気休暇も年休も使い果たして、あわや退職というところまで行ったが、ぎりぎりで職場復帰できた。結局、定年まで勤めることができたから、これは、幸いだった。間質性肺炎になったことは不幸だったと思うが、間質性肺炎の中で、リウマチ性というのは、最も軽いものだ。進行の危険はあるのだが、ステロイド治療が有効だ。治療法が見出されない特発性間質性肺炎とは異なる。不幸中の幸いであった。

さらに重なる不幸は、白血病である。間質性肺炎に白血病が重なるというのは、なかなかのものだ。白血病には絶望的なイメージがあるが、同じ症状を示す白血病の中でも、慢性骨髄性白血病というのは、特別なものだ。近年、特効薬が開発され、もはや絶望的な病気ではなくなっている。不治の病であり、抗がん剤を飲み続けなければならないのは不幸だが、薬を飲んでいる限り、悪化することはない。これこそ不幸中の幸いだ。

このように、僕は、何度も不幸に遭遇している。そして、その度に、不幸中の幸いで切り抜けて来た。酸素ボンベを抱えながらも、アクティビティーを保ち、旅行に出かけたりすることは、むしろ健常な人より多いだろう。今からも、数々の不幸に見舞われるだろうが、それで挫けないと言う妙な自信が付いてしまっている。

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<追記>
最近、僕の病歴にまた一つ不幸中の幸いが付け加わった。「肺がん」となり、CTでも腫瘍マーカーでもそれが確認されて余命2年を覚悟したのだが、どうも、活性の低いガンだったらしく、ガンとの共生が可能かもしれないということである。間質性肺炎、白血病、肺がん。これだけの不幸を抱えて、まだ頑張れているのは幸いだというしかない。

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